写真工房 道
photographer
石田道行 プロフィール
兵庫県姫路市出身 中学時代は遠くへ旅することに憧れを抱く自転車少年でした。卒業後は神戸市内の高専の機械工学科に進んだが工学の勉強には馴染めず、そんな夏に自転車で北海道を旅しました。
念願の一人旅、しかも2ヶ月に及ぶ野宿の旅は16才になったばかりの少年にとって毎日が出逢いと感動の連続であり、そこからボクの写真は始まった。北海道の旅は翌年以降も続き、4年目から自転車はオートバイに代わり23歳の夏まで続くことになる。こうして多感な青春期の大半を旅とアルバイトに費やすことになったその頃、カメラマンになりたい!という将来への想いが初めて生まれた。
大阪の写真専門学校へ進み、街中でのスナップ撮影と暗室作業を学び、そして朝までアルバイトに精を出す毎日で卒業後は大阪市内のスタジオで広告写真に携わった。旅での感動から始まった写真ではあったが、仕事としての写真となると他に選択肢はなく、時代はバブル景気に沸き仕事は超多忙だったが、目指した写真とのギャップを埋めることが出来ず、次第に写真への興味をなくしていく。
10年間のブランクを経た後に、あるきっかけから再び写真への想いが再燃すると、「感動の先に生まれる写真」という原点に帰り1997年に信州へ移住。写真活動を再開し、四季折々の自然を撮り始めた。
森との出逢い
2000年5月に初めて訪れた信越国境の天水山でのこと。ある偶然の出逢いに導かれるようにこの森にたどり着くと、それまで穏やかだった森が一転、雷鳴が轟き突然の豪雨となった。そしてそのあと同時に陽が射し込んだ。地を這う霧の中に降り注ぐ光を透過したブナの若葉が鮮やかに光る幻想的な空間に「この世にこんな美しい緑があったのか!」そのとき大げさでなくそう思った。夢中でシャッターを切るまでもなく、すぐにフィルムは尽きた。雨は更に激しく降り続いたが森の中は意外なほど静かだった。激しく降る雨を樹々が受け止め樹幹流となって幹を流れる音が聴こえる。光と水と樹々に包まれるような心地よさと不思議な安堵感の中で、ただ目の前の光景に立ち尽くしていた。
太陽、水、そして森
人はそれらに守られ生かされている
そして、ぜんぶつながっている!
そのとき直観的にそのことを理解した。このときの体験は、それまで意識してこなかった多くのことに気づき、考えるきっかけとなり、心から伝えたいと思う被写体との出逢いはその後の写真を方向づける大きな転機となった。当時はまだフイルムが主流だったが、デジタル環境を整え印刷媒体に依らずインクジェット大判プリントによる個展活動を県内外で開始する。
多くの個展開催のノウハウから現在は安曇野市三郷の自宅に併設する工房で「写真工房 道」を開設し、写真家からの依頼による大判プリント出力やオリジナルのフレーム制作など、展示まで含めたトータルな作品づくりをサポートしながら自身は信越国境付近のブナの原生林を主な撮影フィールドに「森に学んだ自然観」を個展で発信する。
時を超えて
2014年に松本市内で開催した森の写真展で横内祐一郎氏と出逢い、その父である横内勝司氏が昭和初期に撮影したガラス乾板写真の存在を知り、それまでどんな写真からも受けたことのない衝撃を受けた。何度も横内家を訪ねて祐一郎氏の話を伺ううちに横内勝司に魅了され写真展開催を熱望し、乾板のデータ化に取り組んだ。一年後の2015年5月に昭和初期の日常を再現した横内勝司写真展「時を超えて」を松本市と安曇野市のギャラリーで開催。翌年には写真集「時を超えて」を出版し、東京と大阪で写真展を開催し、その後も名古屋、福岡、滋賀、京都、そして北海道と、この写真の存在を知ったファンの要望に応え各地で開催し大きな反響を得る。
あづみの写真交流展「十人十色」
2019年1月から2月末まで、安曇野市穂高有明のギャラリーレクランにて県内外から集まった15名による写真展イベントを開催。独立した5つの展示室を持つ廻廊式ギャラリーという特徴を活かしたこの企画は、約2ヶ月に及ぶ長い会期を3期に分け、1人で1部屋の展示を受け持つ個展形式の写真展。個展の自由さとグループ展のスケールメリットを併せ持ち、個展開催へのハードルを一気に下げることとなり、初開催から多くの参加者を集めた。普段は個々に活動するプロ・アマ15人の写真家による個性の競演は多くのファンの支持を得てコロナ渦の影響を受けながらも2022年の第4回まで継続。2023年は会場を安曇野市豊科近代美術館に移して開催。写真工房 道として展示者のサポートをしつつ、作家としても展示に参加している。
10代後半 北海道の旅にて
20代前半 通天閣の下で
20代前半 大阪でのスナップ
2000年5月 ブナの森にて
横内勝司写真展「時を超えて」
あづみの写真交流展「十人十色」